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9月, 2019の投稿を表示しています

ノーベル・ファンファーレ/トランペット四重奏

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"The Nobel Fanfare"  [作曲] フランソワ=アンドレ・ダニカン・フィリドール(André Danican Philidor)  [編曲] ウルフ・ビョーリン(Ulf Björlin)  [編成] トランペット4重奏(2重奏)  [演奏時間] 15秒  [最高音] A 毎年、10月ごろに受賞者が発表されるノーベル賞ですが、今年も日本から吉野彰さんが化学賞を受賞されました。授賞式はノーベルの誕生日である12月10日と決まっているようです。 この日に受賞者がメダルを授与される映像はニュースなどで見ることがありますが この時、ファンファーレが鳴っているのはご存知でしょうか? 以下の動画は2018年、日本からも本庶さんが受賞しており、授与され握手した際にファンファーレが演奏されています。(50分29秒ごろ) よく耳を澄ませると、2和音のファンファーレですが、前半と後半聴こえてくる場所が違うようです。 昔からこのファンファーレの作曲者が気になっていたので調べてみました。 ググっても授賞式やコンサートの動画は発見できるものの作曲者名がなかなか見つからなかったのですが、初めに見つけたのが、こちらの動画。 女の子がオルゴールを回して奏でられるのが調は違いますがまさしくあのファンファーレ。この動画の下のコメントに ”Francois-André Danican Philidor (1726-1795) i arr. Av Ulf Björling (1933-1993)” とありFrancois-André Danican Philidor が作曲者でUlf Björlingが編曲者であることが書かれています。 これは一般の方の投稿のようで確証を得るために、さらにこれを手掛かりに検索すると今度は、 ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団  のホームページのトランペットパートの紹介に下の方に、 André Danican Philidor The Nobel Fanfare, arr Ulf Björlin とあります。ロイヤル・ストックホルム・フィルはまさに式典のとき演奏しているオケです!これでほぼ間違いないと思い、さらに検索してみると今度は、 こんな画像を発見しました。これはあの女

葬送と勝利の大交響曲よりアポテオーズ

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"Apothéose de la Symphonie Funèbre et Triomphale"  [作曲] H.ベルリオーズ(Hector Berlioz)  [楽譜入手先]  IMSLP(無料)   今回は、冒頭のトランペットファンファーレがかっこいい一曲を紹介します。 ベルリオーズの「葬送と勝利の大交響曲」より終楽章  アポテオーズ です。 この曲は、幻想交響曲で有名なベルリオーズが作曲した最後の交響曲なのですが、オーケストラ曲ではなく吹奏楽のために書かれたとても珍しい作品なのです。 年代的に残念ながらサックスは含まれていませんが、まぎれもない吹奏楽のための作品で、クラシックの大家による吹奏楽作品としてとても重要な作品です。 (紹介するベルリンフィルの動画では申し訳程度に弦楽器が加っていますが、作曲家自身が後から弦楽器および合唱を追加したようですが、旋律の主体はクラリネットであり完全に吹奏楽です。) そのため吹奏楽界では有名ではあるものの、演奏時間30分以上、作曲家の指定では100名を超える編成と吹奏楽作品としては非常に大規模であること、全三楽章構成で、第1楽章「葬送行進曲」につづく、第2楽章「追悼」はトロンボーンの独奏を伴っていることもあり、重要でありながら演奏機会に恵まれない作品でもあります。 さて、今回紹介する最終楽章(第3楽章)「アポテオーズ」は、ドラムロールに導かれ4パートのトランペットおよび2パートのコルネットがユニゾンでファンファーレを開始します。 ホルン・トロンボーンを加えながら、ファンファーレの後半でユニゾンから和音へと変わります。 非常にオーソドックスなファンファーレのように聴こえますがトランペットパートは倍音「ド・ミ・ソ・レ」のみで構成されており、当時台頭してきたピストンをもつコルネットで演奏可能だった「シ」を加えており、トランペットのみでは演奏不能だった和音を持つ画期的なファンファーレなのです。 それにより実現したFdurに導かれtuttiとなります。このテーマはなかなかキャッチーで口ずさみたくるような魅力的なテーマです。(CMで使用されていた記憶があります。) 3楽章自体は8分~10分とそれほど長くはないものの、中間部でシリアスな雰囲気(1、2楽章と非常に重苦しい場面を回想さ

デザート・スケッチ/トランペット五重奏

"Desert Sketches"  [作曲] ケイシー・マーティン(Casey Martin)  [編成] トランペット5重奏  [演奏時間] 10分  [最高音] ハイCb  [出版] CCM Music  [楽譜入手先]  CCM Music(海外)  [サンプル楽譜]  スコア 今回紹介する、デザート・スケッチ(砂漠のスケッチ)は以下の2楽章で構成されています。  I. The rocks, we must climb them! ~ 登るべき岩  II. The desert, from the top. ~ 頂上からの砂漠の風景 2つの楽章は切れ目なく演奏され、全体で10分とトランペットアンサンブルとしては大規模な曲です。 第1楽章の冒頭はそそり立つ岩を象徴するかのような、2nd以下のユニゾンのファンファーレから始まります。1stはハーマン・ミュートでフラッターをかけて不気味な雰囲気を出しています。 徐々にテンポを速めスリリングな雰囲気は険しい岩を登っていく様子を表しています。も 切れ目なくアタッカで演奏される第2楽章は、打って変わって静けさの中から始まります。 しばらく、穏やかな旋律と非常に美しい上昇形の音型を繰り返しながら徐々に頂上への到達の歓喜が頂点へ達したかのようにffへと到達します。 その後、落ち着きを取り戻し、ハーマン・ミュートで表される風の中へと消えてきます。 作曲者のケイシー・マーティンはアメリカの作曲家・トランペット奏者で、全米トランペット選手権(NTC)のトランペットアンサンブル部門への出場経験もあるようです。 砂漠のスケッチというタイトルと最初のファンファーレとガラガラヘビのようなハーマン・ミュートのフラッターでエジプトや中東の砂漠をイメージしてしまいましたが、舞台は、アメリカのカリフォルニア州南東部に位置するジョシュア・ツリー国立公園での作者の体験に基づいているようです。  グレードについて明記はありませんが、スコアを見て頂ければわかる通りかなり高いことがわかります。変拍子をカウントするだけも一苦労。さらに各パートずらした上行形のモチーフも合わせるのに苦労しそうです。(それが美しいのでしょうけど。)  最後も消えゆくような、金管には苦手な表現で終結しています。

アイス・ジャーニー/トランペット四重奏

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"Ice Journey"  [作曲] ジェイソン・バソコ(Jason Basoco)  [編成] トランペット4重奏  [演奏時間] 3分半  [最高音] ハイC  [出版] Balquhidder Music  [楽譜入手先]  Balquhidder Music(海外)   Presto music(海外) 作曲家と曲の背景についての詳細は分かりませんが、面白い曲を発見しましたので紹介させていただきます。残念ながら国内での楽譜の取り扱いはないようですので、今後取り扱われることを期待したいです。 アップテンポの変拍子5/4と7/4が交互に繰り返される冒頭は、リズミカルでありながら寂しげでもあり、くわくわくもする不思議なイメージがわきます。(ゲームミュージックのようにも聞こえますね) 中間部の最高音ハイCから下るベルトーンはまた違う美しさを感じさせます。 ベルトーンを繰り返し展開し盛り上がって静止した後、短いコラール風のゆっくりした部分(この部分美しいのでもっと聞きたい!)を経て冒頭の断片が再現され終結します。 タイトルのIce Journey(氷の旅)がどういう経緯でつけられているか不明ですが、聴きようによっては雪が降り、積り、雪崩を繰り返し、静まり、さらに、雪が降る・・・なんていう勝手な解釈もできますが(氷でない?ですね)場面展開が見えるためいろいろな想像ができてる曲です。 3分ちょいの曲には酷な注文ですが、展開部分がいまいち(もう少し劇的に展開してほしかった)なのと、美しい部分があまりに短すぎるのがもったいない気がしますが(この部分のモチーフだけで1曲できるというのは大袈裟?)トランペットの魅力が十分発揮された曲ではないかと思います。 グレードについても特に明記されていませんが、高いように感じます。 しかし、初見は無理にしても、時間をかけてリズム感とアクセント、短めでしっかりした発音にすればそれなりに聴こえる作品に思えます。 中間部のハイC一音(ミスしてもあまり致命的にはならない?)を乗り切れば、それほど高音もなく時間的にも3分半とお手頃なのでアンコンなどにも向いているように思います。 挑戦してみる価値がありそうな一曲です。

コントラスト/トランペット五重奏

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"Contrasts for Five Trumpets"  [作曲] アンソニー・プログ(Anthony Plog)  [編成] トランペット5重奏  [演奏時間] 8分半  [出版] BIM社  [楽譜入手先]  BIM社(海外)   Presto music(海外) A.プログ氏はアメリカの著名なトランペット奏者で指揮者、作曲家でもあります。トランペットのための多くの作品や練習曲を残しており、この作品もその一つです。 この曲は2014年に作曲され、次の三つの楽章で構成されています。  I. Polarities (3'20)  II. Atmospheres (3')  III. Motion (2') 第1楽章の”Polarities”は二極性という意味で文字通り、冒頭のスラ―で滑らかに演奏される静かで神秘的なモチーフと反するのスタッカートで演奏される激しい部分で構成されています。この2つがお互いにからみあい展開していきます。 第2楽章の”Atmospheres”は大気という意味で、ミュートをつけた状態でふわふわとした雰囲気を表しています。1楽章の神秘的な感じを引き継いでいるように思えます。全体を通して落ち着いた楽章です。 ミュートをつけたまま切れ目なくアタッカで突入する第3楽章の”Motion”は動きという意味で、テンポアップし動きを表現しています。各パート別々のタイミングで順々にミュートを外し全員がオープンになり激しさを増していきます。最後に1楽章のモチーフを再現して終了します。 題名のコントラストの名の通り様々な表情が見られますが、冒頭の半音の下降系で全体が統一されており魅力のある作品となっています。 現代曲で不協和音が多用されていますが、ホルンやトロンボーンに比べて音域が狭く高音で和音が合わせにくいトランペットには、こういうスタイルの方が返って魅力的で効果的なのかもしれません。(通常の和音をおろそかにしていいということではありませんが・・・) トランペットのミステリアスでかっこいい一面がうまく表現された作品です。 しかし、プログの作品全般に言えることですが難度は非常に高く、変拍子や細かいパッセージが多いため、高度なアンサンブル力が必要となります。